<季節の話題2020 読売新聞・編集手帳> 空豆 2020.5.14 小林 勝

読売新聞・編集手帳 空豆(そらまめ)

 

空豆は若い緑のサヤを空に向けて立つことから、その名がついた。「5月の豆」とも呼ばれ、今頃の時節に焼いたり、ゆでたりしたものがビールのお供になる。🔶例年なら、居酒屋などで飛ぶように売れたかもしれない。何日か前、近所の青果店で袋詰めを勧められた。今年は暖冬のため実がふっくらとして上出来きに育ちながら、需要の低迷でかなり安いのだという。🔶気温が汗をかくほどに高くなるなか、39県で緊急事態宣言が解かれる見通しになった。居酒屋で味わう冷えたビールとのコンビに、間に合った地域があるということだろう。🔶とはいえ、加減よく踏み出していただきたい。宣言の解除は安全宣言ではないのだから・・・と、とりあえず申し上げておくものの、何日も続けて感染者を出さなかったのは地域の努力の成果にほかならない。緩みは禁物だが、頑張った人にはご褒美が必要である。🔶それにしても青果店で手に取った空豆の値は生産者が気の毒になるほどだった。素十の句を思い出す。<豆飯に一汁あればよからんか>。豆ご飯なら、どの地域の人も句に間に合う。2020.5.14